記者ハンに準じることの話

編集っぽいお仕事をしていた人は皆、『記者ハンドブック』(共同通信社著)のお世話になっているかと思います。Webの世界では通用しない内容もじゃっかんあったりするのですが、普通に文章を書くときの用字用語確認(統一)にはとても役立ちます。広報・マーケ系の人も持っている人が多いですよね。

記者ハンに準じることが文章として美しい……というわけではないです。ぐぬぬ、と思うことも多いです。でも、ウェブサイトである程度のボリュームのコンテンツを公開するとなると、一般的な用字用語の統一、自社独自の表記統一(プロダクトやサービスの正式名称など)をしておいたほうが、信頼は得られやすいかと思います。そしてそれ以上に、ムダに悩む時間、決める時間が削減されますし、外部のライターさんや編集・校正に仕事を頼むときにも「記者ハンに準じる」と伝えればいいので、運用的にらくちんなのです。

とはいえ冒頭でも書きましたが、Webではちょっとどうなの……って思う部分もあります(URLなどの表記の仕方とか)。それ以前に、そもそも紙とWebでは閲覧環境がまったく異なるうえに、それぞれの環境に依存する部分が多くアンコントローラブルなので、Web独自のルールも必要になってきますよね。和文中の2単語以上の欧文の前後に半角スペース入れるの、入れないの?とか。「!」や「?」で終わる文章の次の文章の前には全角スペース、というのも、Webでは半角スペースでいいんじゃない?と思ったり。

私はさほど文章がうまいわけでもなく、おもしろいことが書けるわけでもないので、仕事で何かを書くときは「きちんと書く」ということぐらいは心がけたいです。もともと誤字・脱字の多いダメな人なのでなおさら。

最初は「それをいちいち引くの?」って思う人もいるみたいなのですが(そう言われたこともある)、ちょっとやっていると、基本的なものはすぐに染み付いてくるのです。なので「いちいち見なければいけない状況」はそんなに長く続かないのですね。

最初に書きましたが、編集者だけじゃなく、広報やマーケの人も必携かなと思います。すべて記者ハンに準じる必要があるわけではなく(社内でルールを決めればいいだけですが)、こういう紙のハンドブックが手元にあると、ササッと確認できてすごくらくちんです。実際、私が昔、印刷会社でカタログなどの印刷物を作るチームにいたとき、クライアントの広報・宣伝系の人が記者ハンに準じた朱書きをちゃんと入れてきていた記憶があります。校正記号がちゃんと使える人も多いんですよね。

いやいや頑張るとこそこじゃないですよね、とも思われそうですけど(そこだけじゃダメだけど)、できたら事故も減るし、本分じゃないとはいえ、ちょっとした効率向上のためのスキルじゃん?ぐらいです。

でも本当に悩ましいときはある。上に書いた「2単語以上の欧文の前後の半角スペース」とかもね。本当は半角スペース入れるとか気持ち悪いんだけど(紙だと組版ソフトで和文欧文間の距離四分アキ設定がデフォかな)、確かに前後の和文にくっついてるの気持ち悪いし、統一できてないのはなおさら気持ち悪い。

長々と書いたけど、こういうのって「読むほうはンなこと気にしてねーよ」な部分も多いのかもしれない。そういえば以前、いろいろと文章の修正をお願いしたときに「さわさんは編集とかやってたかもしれないですけど、読む側は編集者じゃないからそんなの気にしないと思います……」と言われたことがありました。ほほーぅ、確かにな……。別に用字用語統一されていたからって(短期的に)売上に直結する問題ではまったくないね。「作品」を作っているわけじゃないし、企業のサイトの場合はマーケティング、セールスのためのサイトであることが多くて、それ自体は売り物じゃないし。その辺のプライオリティはバランスよくやっていかないとだね。

ただ、それ言い出すと「使う側は◯◯じゃないですから」ですべて崩壊してしまう気もした……。

もろもろ精進します。

dtp_expert.JPG本文にはあまり関係ないけど、先日、15〜6年前に JAGAT(日本印刷技術協会)のDTPエキスパート認証試験を受けたときに勉強していたノートが見つかって、その几帳面さと子どもっぽい字が懐かしかったです。